2004年06月 第19冊
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宮部みゆき 「魔術はささやく」 新潮文庫
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早くも宮部本第2冊目です。
本書は第二回日本推理サスペンス大賞(89年)受賞作品。
前回は宮部本でも時代小説だったが、今回は主流の現代サスペンスもの。
不幸な生い立ちながらしっかりと生活している男子高校生が主人公。
青春小説に陥りそうな設定だが、全くノン・ノン・ノン。
父は公金横領の上愛人と失踪、母は生活苦に喘ぎながら病死する。
心優しい伯母夫婦に引き取られるが、義理の叔父がタクシー運転手で交通
事故によって若い女性を事故死させてしまう。
とまぁ、これでもかこれでもかと不幸が重なってゆくのだが、
主人公は不幸人生ゆえか冷静に忍耐強くこれから巻き起こる非難に耐え、
事件の真相を探し始めてゆく。
特徴的なのがクライマックスの二段構えだ。
本来なら交通事故の真相を暴いてゆくクライマックスだけでも十分堪能できるのだが、
事件の真相は更に深いところがあり、ここまで書きこまないと賞は取れないのだろう。
この書はもう多くの方がご存知だろうし、初期の作品になるだろうからこの後
もっと優れた作品が噴出しているんだろうが、
宮部本第2冊目の私としては純粋に面白かった。
現在進行形の作家なので、応援のし甲斐もありそう。
新宿紀伊国屋書店でサイン会があるのだが、整理券百名とのこと。
立ち寄ってみたが、当然の如く「終了」のシールが貼ってあった。