2004年06月 第24冊
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山田風太郎 「戦中派不戦日記」 講談社文庫
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このメルマガを始めてから2冊目の風太郎、終戦年の1945年一年間の日記そのもの。
日記執筆当時の著者は二十代の医学生なのですが、
現代の学生がここまでの文章や思考ができるだろうか。
というより、三十代の私自身もこんな文章は書けません。
戦後60年、現代の我々はパソコンを始め携帯やマイカーなど
多くの神器を使いこなしているが、文章力に於いては完敗であろう。
敗戦を知っている我々は、戦中の軍部の馬鹿げた報道の愚かさを
知っているが、当時の一学生が事の本質を冷静に見抜いていた事に驚かされる。
ほとんど原文ママなので、頓珍漢な箇所もあるにはあるが、
全体としては驚くほどの洞察力だ。
500ページを超える文語体には時間を要したが、
風太郎の原点を知る上でも、戦中の市井を知る上でもお薦めの一冊。