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2004年10月 第47冊
「日本名匠列伝」

江藤俊平、志茂田誠諦  「日本名匠列伝」  学研M文庫

これは着眼点もいいし、それでいて歴史小説を読む中で気になっていた
名物の話なんかも出てきて面白い一冊だった。

鎌倉期の有名な仏師・運慶を筆頭に、刀工の正宗・村正・虎鉄、
陶工の加藤景正・柿右衛門、意匠家の本阿弥光悦なんかはお馴染みなところ。
甲冑師の明珍信家、人形師の人形忠、釜師の辻与次郎なんて
マニアックすぎてこんな列伝集はホント珍しい。

現在「ビック・コミック・スペリオール」で大人気連載中の「あずみ」にも
登場してくる「左甚五郎」なんかも全国各地の名もなき名大工の伝説が
寄り集まって出来た偶像なんじゃないか、といった考証が繰り広げられて面白い。

また、本阿弥光悦の「舟橋蒔絵硯箱」などは、子供のころ歴史のカラー資料集で
その美しさと硯箱に和歌の文字を立体的に浮かび上がらせるアイディアに、
子供ながらに感心したものだが、この人はなかなかの血筋の人である。
本阿弥という苗字から、お坊さんかその流れの人だと思っていたが、
従二位五条高長の子だという。

当時は高貴なお家の子弟は、一人でも仏門に入ると多くの親族が極楽往生
できるという迷信があり、その一環として彼も仏門に帰依したんだろう。

そして妙本阿弥陀仏と称し、そこから本阿弥という苗字になっていったという。
本来なら五条家の人なんだから、五条光悦と名乗っているところだったんだろう。
こういう流れを読むにつけて、現代の苗字の固定化は実に詰まらないものだと思う。






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