2005年07月 第94冊
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トムスン 『ヴァーチャル・ガール』 ハヤカワ文庫
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小中学生のころ、星新一と眉村卓を狂ったように読んでた時期があった。
どちらも共通している形態が、ショート・ショートでありSFであること。
ショート・ショートは読みやすく、それはSFである。
だからSFとは面白くて読みやすいモノが好き、
という流れが出来てしまった。
本格的な文体で迫る、正統派SFである、
海外SFは「ムズカシソウ」な気がしてた。
敬遠してきた。
ところがそんな児童体験に二十年近くも束縛され、
私はアシモフやクラークにさへ手をつけず、
いいおっさんになっている自分に気づいた。
何故だか、急に読書人生を損している気がして焦ってきた。
知らないことが、勿体無い気分で一杯になってきているのだ。
とあるメルマガで面白いと紹介されていたのが、本書「ヴァーチャル・ガール」。
なんとはなく、ダッチ・ワイフのロボットものを想像してしまうのが、
悲しいレベルの低さなのだが、これが結構奥が深く書き込まれている。
女流作家が書いているのも、良いのかも知れない。
天才ロボットおたくが、大会社を総帥する父親から忌避し、
片田舎の修理工場の片隅でこの「ヴァーチャル・ガール」を完成させる。
そんな完璧な人工頭脳を持ったロボットが、ロボットおたくと
生活を始めるのだが...。
実際にロボットを産み出したら起こり得るであろう事象が
可能な限り描き込まれているし、父親からの逃避行は
サスペンスとミステリとしても上手く出来ている。
短い感想が身上なので、この辺で筆を置きたいが、
私ははっきりと読書方針を固めた。
「海外SFは宝の山だ!ちゃくちゃくと読み始めるぞ!」