2005年09月 第114冊
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隆慶一郎 『花と火の帝』(上下) 講談社文庫
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以前、「捨て童子・松平忠輝」を読んだんだが、中巻ぐらいから読むのが
つらくなった。
性に合わないのだ。
主人公松平忠輝(家康第六男)は天才、天賦の力と努力によって
スーパーマンのように成長してゆく。
それでいて日本を内乱にしないため兄(徳川秀忠)との葛藤を我慢して、
飄々と流刑されてゆく。
そんな馬鹿な!
本当に力があるのなら、兄を倒し将軍になれば良かったじゃないか。
本当に優れていたなら、忠輝が将軍になって善政を敷いたほうが良かった
じゃないか。
そして今回の「花と火の帝」。
後水尾天皇とその従者岩介を中心に、徳川幕府との表裏の闘いを描く。
徳川草創期の朝廷側を見据えた構図には面白みを感じたが、
どうにも馬鹿馬鹿しい話の連続でうんざりした。
念波・念力・テレポーション。
あんたらは超能力者かい。
そう、そうなんです、影を飛び回る岩介たちは超能力者。
こういった話は全然ついていけない。
本書は隆氏絶筆の最後の作品なのだし、氏の最後の振り絞るような力が
込められているのも感じるのだが、そういった本を批判するのも
心無いことだと思うのだが、詰まらない本だったと、あえて言いたい。