2005年10月 第123冊
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海音寺潮五郎 『おどんな日本一』 新潮文庫
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タイ捨流って、ご存知ですか?
剣豪小説を読んでると、示現流のからみでよく出てきます。
本書では、その「タイ捨流」流祖、と云っても限りなく流祖だけで
消えてしまったんですが、丸目蔵人が主人公です。
宮本武蔵や柳生十兵衛といった花型剣士もいいけど、こいった実力は
あったのに運に恵まれずに消えかかっている人物伝を読むのが大好きです。
また、こういった埋もれた人物を面白く掘り起こす作家にも敬意を
感じます。
そういえば、週刊ヤング・マガジンっていう漫画雑誌に連載中の
「センゴク」も良い狙い目だ。
戦国時代を描いた漫画だから「センゴク」でもあるのだけど、
「仙石秀久」を主人公にしているから「センゴク」でもあるわけ。
仙石秀久を主人公にした小説は知らないし、そんな漫画などもっと
知らない。だけど、そういった脇役的な人物から読み厭きた
戦国時代を見るとこれがまた新鮮なのだ。
本書の「おどんな日本一」でも、柳生石舟斎や上泉伊勢守が出て来るのだが、
ほんとはそうだったのかも知れ無い、と思わせるエピソードが
多数でてくる。
著者は九州人なので、大いに九州男児に肩入れしているが、
それを抜きに考えてもリアリティ溢れる興趣尽き無い作品だ。
二百余ページと読み易いが、絶版なのが残念。