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2005年12月 第149冊
光原百合『十八の夏』

光原百合  『十八の夏』  双葉文庫

多くの本を発行後数年経ってから読んでいるのですが、
本書も今ごろ読んでしまったことを後悔するくらい、イイ本。

表題作「十八の夏」ほか、「ささやかな奇跡」「兄貴の純情」
「イノセント・デイズ」と中編4作収録。
こうやって感想を書こうとして、そのどれもが甲乙つけがたく、良かった
良かったとしか表現できない自分が悲しくなってくる。

「十八の夏」は浪人生になった少年が、春の堤で美しい女性と出会う。
あらあら、随分センチメンタルな話じゃ、と読んでいたが、違うんですねぇ。
この作品は第55回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞しただけあって、
後半のどんでん返しは堪らない展開。

本屋勤務の子連れ狼が主人公は「ささやかな奇跡」。
愛妻を亡くして幾年月。
そんな彼にも、ようやく春風が吹くのですが...。
大阪のやわらかい言葉とあいまって、美しい話です。
女性ならではの名品。

「兄貴の純情」はガラッと趣きが違う。
ここらへんが、著者の広がりを感じさせる。
猪突猛進型の役者を目指す兄貴と、判断力はあるが決断力に欠ける僕。
この兄弟が見た先生一家との、出会いと別れを描きます。

そして最後を飾るのが「イノセント・デイズ」。
悲しい話なんですよ。
そしてじんわりくる話なんですよ。
推理ペーストも効いていて、最後はどうなるのかハラハラ。

光原百合さんの「時計を忘れて森へ行こう」も評価が高いから、
文庫になったらきっと読むぞぉ!






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