2006年03月 第168冊
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鷺沢萌 『F 落第生』 角川文庫
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私が学んだ学校の成績は、優良可不可とか1・2・3とかでしたが、
ABCD・・・という評価もあるそうです。
本書はそんな成績評価の不可を意味する「F」が題名。
直接「F」という作品があるわけでなく、7編の短編を総した題名。
なんとなくどんよりした設定の多い作品が並ぶ。
と云うのも「F」に値する状況の女性を主人公にしてるわけですが、
不思議と読ませます。
十ページ程のあっという間の掌編もあれば、六十ページ少しの短編もありますが、
話はどう行きつくんだろうと読ませるのがウマイ。
一編を採り上げると「重たい色のコートを脱いで」。
中小出版社の漫画編集者をしている女性が主人公なんですが、
そんな彼女も最初から漫画編集者じゃなかった。
いい大学で真面目に勉強して、大手出版者に入社。
でも編集長にとことん嫌われて、だけど頑張って頑張って体を壊して...。
いろいろあるんだけど、行きついたのが弱小漫画誌の編集者。
だけどそこでもいろいろあるんですね。
純文学って、そんなに愛だの恋ばかりやってて仕事が出来るんだろうか?
と思うような作品が多いが、この人の作品は現実を見据えている。
だから支持もされるんだろうけど、ストーリーも面白いし、
もう一編、もう一冊と読みたくなる力がある。
一昨年読んだ一冊。
鷺沢萌『帰れぬ人びと』
http://rndocdks.web.fc2.com/doku002/doku00054.html