2006年03月 第170冊
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山田風太郎 『幻妖桐の葉おとし』 ハルキ文庫
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百ページ近くの表題作を始め、「数珠かけ伝法」「行燈浮世之介」
「変化城」「乞食八万騎」「首」といった、全6編からなる中短編集。
表題作「幻妖桐の葉おとし」は豊臣家の生き残りをかけた動きと、
秀吉の未亡人北政所の最期のどんでん返しが読みどころ。
でも、さもありなん、といった落ち。
この中編は他の短編集にも収録されており、風太郎みたいに作品が
大小さまざまにあるとどうしてもかぶって収録されてしまうようだ。
ただし他の5編は珍しいそうだ。
面白かったのは「乞食八万騎」「首」。
前者は今なら差別作品だとなってしまうような作品だが、
江戸時代のその世界の一端が垣間見れて興味深い。
後者は井伊直弼の「首」の話。
直弼が桜田門で首を取られた話は有名で、じきに首は戻って
胴体とくっつけられた話は更に有名だが、本編ではその間、
首がどこをどう彷徨っていたかを語るお話。
風太郎節全開で、よくまぁそんな空想が思いつくなぁという連続。
最期はどうにか井伊家に首が帰って、チャンチャン。
だけどあの時、井伊家彦根藩が激昂して水戸徳川家に殴りこんでいたら、
歴史はもう少しドラマティックだったでしょうなぁ。