2006年04月 第174冊
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百瀬明治 『信玄と信長 天下への戦略』 PHP文庫
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こういった本にありがちな、どちらかに片寄った肩入れは無い。
信長も信玄も公平な視点で甲乙を述べており、強いて言えば「地の利」
「発想そのもの」の違いが浮き上がっている。
百瀬氏は編集者から作家になった人だが、モノの見方は実に学者。
私もこう言う人なら安心して読書できる。
結果だけ見れば、勝った信長が革新的で優秀、負けた信玄は旧弊で田舎モン。
だけどそれぞれがそれぞれの立場で必至になって活動した結果が歴史なのであって、
その時両者が入れ違って配置されていたら、これまた違った歴史が残ったかもしれない。
本書でも述べられているが、桶狭間で敗れた今川義元。
この人がこんな惜敗しなかったら、信長がここまで
電撃的なカケをしなかったら、ほんと歴史はロマンを感じます。
旧い足利幕府はいつかは朽ち果てたろうから、
今川が足利幕府の副将軍になれたとしても、
いつしか積もり積もった不満エネルギーに今川と足利は
消えていったろうけど、その時新しい将軍に就いたのは、
徳川でも織田でも、ましてや豊臣でもなかったろう。
本書では、「信玄は不敗主義」、「信長は必勝主義」である、と力説してます。
たしかにそうですよね、これって二人の生き様を見事に表わしている。
僕はどっちだろう?
あなたはどっち?