2006年05月 第181冊
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北原亜以子 『東京駅物語』 新潮文庫
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面白かった。
面白いねぇ、グランドホテル形式。
明治・大正・昭和と、東京駅の始まりからドラマは始まる連作短編集。
とはいっても、特定の主人公がいるわけでなく、ちょろっと出てきた人が
何話か後に中心人物として出てくる手合い。
ご想像のとおり、途中戦争が絡んできて、かなり感動してしまう。
有楽町のあたりは大空襲があったそうで、それを知っている読み手は
「ああ、この母子はどうして運命的に有楽町に吸い込まれてゆくんだ」と
ハラハラ・イライラ。
有楽町から先に歩いて帰る少年が吉と出るのか、有楽町で切符を求める
行列に加わる母に凶が出るのか。どちらにせよ、ふたりとも無事
東京駅を発てれば、新しい人生が待っているだけに、ラストの非情さは
胸を打ちます。
北原亜以子の「亜」は、本当は旧字体。
誤変換が恐くて、「亜」にしてます。
この方は時代小説もいろいろ出してるようなので、
安心して買い込もうと思ってます。
いい、作品、作家です。