2006年09月 第206冊
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隆慶一郎 『時代小説の愉しみ』 講談社文庫
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歴史小説家にはエッセイが多い。
膨大な知識と歴史観に裏打ちされ、話術の巧みもあいまって、
多くのエッセイは面白い。
独自の観点から新しい歴史小説を描き続けた隆慶一郎も、
大いに期待して手に取った。
しかし、どうも合わない。
彼は永らく映画TV時代モノの脚本家として
名を馳せた人だが、その業界人として蓄積された
彼の生き方に、私は馴染めないんだろうと思う。
はっきり言って、芸能界絡みは嫌いだからか。
約二百ページのうち、半分は「叡山焼亡」「織田信長」
「武田信玄」「北条氏康」といった歴史漫談。
あと半分は、ほんとにエッセイ。
たとえば、「たけし事件」。
ああ、懐かしい、こんなこともあったよね。
「妻への詫び状」。
向田邦子が流行った頃か?
「教える罪」(一)(二)(三)。
シナリオ教室の講師をやっていた頃の苦労話。
小説が好きな人って、多くは自分も作文してみたいって願望がある。
そんな人達を教え、運良くTVのシナリオに採用されたはいいが...。
ほとんどはそこからが、苦痛の連続になるようである。