2007年03月 第209冊
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重松清 『疾走』(上下) 角川文庫
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この読書感想を書かなくなって4ヶ月。
その間も地道に本は読んでたんですが、この本は久々に何か
言いたい気にさせてくれました。
角川文庫版のブックカヴァーは非常に鮮烈なデザインで、
それに相応しいくらい劇的なストーリーです。
久々に寝る間も惜しんで本を読みました。
何度も聖書の文句が挿入され、いささか教訓めいてるし、
ここまで裏目に人生が転がっていくのか、と悲惨の連続なのですが、
これだけのものは読んでおくべきでしょう。
大工の父、気の弱い母、優秀で県下一の高校に進む兄、
そして本書の主人公の弟。
ずるくて根っから悪い幼馴染の友人、ひとりで毅然と生きているエリ、
町にやってきた神父、と登場人物はどれも重要な役割をしています。
兄が進学校で落ちこぼれ、精神が崩れ犯罪を重ねていくことで、
どこにでもある家庭が滅茶苦茶になってゆくんですが、
最後の最後まで救いは無い。
まるで天の神からの視線のように物語は語られてゆくのに、
最後まで救いは無い。
これではあんまりだと思うか、これこそ現実を描ききったと思うか。
まっしぐらに読んだ、久々の小説だった。