2007年06月 第217冊
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徳川宗英 『徳川家に伝わる徳川四百年の内緒話』 文春文庫
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田安徳川家第十一代徳川宗英(むねふさ)氏による本。
生まれとか育ちといったものが滲み出るような語り口。
なかなかな事を書いている時でも、それを度ギツくならない不思議な文体。
高慢でも尊大でもなく、柔らかい温かな語り口。
江戸時代や徳川幕府の話が好きな人には、聞いた事ある話が多く
詰まらないが、徳川家の裏話をこれから知りたい人には好材料。
私は子供の頃は戦国時代モノが好きだったけど、
大人になった今では江戸時代モノが中心。
武家モノにしろ町人モノにしろ、舞台は江戸期ばっかり。
どうしても江戸時代の細々としたコトを喜んでしまうが、
本書では「田安家」についてもページを割いているのが嬉しい。
徳川本家や御三家、加賀前田家や薩摩島津家などは様々な本で
紹介されているし、最後の将軍慶喜を出した一橋家も有名だ。
しかし田安や清水は徳川中後期、幕府内で隠然たる勢力を
誇っていたわりにはその歴史をあまり知らない。
ほとんど徳川本家にとっての一つのポジションのような地位だったようで、
養子に次ぐ養子で、十数年空席という普通の家なら廃滅しているような
期間もあったそうだ。
徳川家康のウラ話だけに留まらず、綱吉・吉宗・慶喜についてのエピソードが多いのは
仕方ないとしても、ほとんどの将軍についてもアレコレ触れられていて面白い。
「徳川家に伝わる徳川四百年の内緒話 ライバル敵将篇 」という続編も
購入済みなので、いずれまた紹介したい。