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2007年07月 第225冊
白石一文  『一瞬の光』  角川文庫

白石一文  『一瞬の光』  角川文庫

文庫本で589ページ、純文学です。
しかし、これほど濃厚で濃密な「読書」を満喫できたのは、幸福な限り。
ここんとこ「当たり本」に恵まれてますが、思いッきし期待して読んで、
軽々と期待を跳躍するほどの感慨を与えてくれた本も珍しい。

白石一文は「不自由な心」で滅茶苦茶カンドーして、速攻で
彼の著作を(古本屋で)集めたのが2年前。
文庫本化されているのはまだまだ少ないので大切に読もうと
取って置いてたら、早くも2年経っていた。

白石一文がスゴイ、って知っている人は、兎に角読んで見たら
すぐ判るだけなんだけど、未知の人に589ページを読み始めろ、ってのも酷な話。
そこで簡単に概略を話しますね。

東大卒のバリバリの超エリートが主人公。
イケメンで仕事が出来すぎて社長直属の秘書経由で人事課長になっていく。
社長の姪と紹介されるとこれがまた誰もが振り向かずには
居られない絶世の美女。
この美女は大会社の御令嬢でもあり仕事も英語を駆使してスゴイのなんの。

こんな人達の話を読んでいて何が面白いの?って思いつつ、
話は段々怪しくなる。
人事課長だから面接もするわけだけど、落とした女のコもいる。
そんな女のコの一人が、夜のバーテンダーをやっている。
そんな一面も人にはあるわな、と見ているのだが、
それが主人公の人生がメチャクチャになってゆく始まり...。

途中まではこのバーテンをやっている女のコは完璧なオカシナ人で
最後の最後でサイコ・ホラーにでもなるんじゃないか?とハラハラして
読んでゆくんだけど、全くの違う世界へと落ちてゆく。
著者の究極の愛の世界のカタチを描いてゆくわけだが、共感できないのに
唸ってしまう結末。

約六百ページも苦楽を伴にした読者と主人公、ですが、
どうにも主人公の心には同化していけなかった。
同化・共感できないのに唸らされる筆力。
これは面白いです。

大作なだけに易々と人に薦めても迷惑な分厚さだけど、
これは読んどいて惜しく無い一週間でした。
一週間かかって読書したわけですが、読書好きなら判ってもらえるでしょう、
最高に読書が楽しい一週間でした!



白石一文「不自由な心」の感想も読んでみてネ!
http://rndocdks.web.fc2.com/doku004/doku00097.html







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