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2007年10月 第239冊
藤沢周平  『橋ものがたり』  新潮文庫

藤沢周平  『橋ものがたり』  新潮文庫

江戸の様々な「橋」を舞台に、庶民の悲喜こもごもを描いた市井モノの傑作。
全十篇、約330ページなので、一篇一篇が読み易く、それでいて
心憎いドラマがこれでもかと詰め込まれている。

十篇のどれかには必ず涙腺を攻撃される作品が、あなたにもあるはず。
新幹線で数時間、必ず退屈しないで過ごしたい、なんて人に最適な一冊。

わたくしお得意な「ケチ」を強いてつけるとするならば、この作品集には
ある共通事項がある、それは。

主人公や関連する男女が、謎深き人であるパターンが多い。
私なんて、謎のある人は嫌で、その人の過去や秘密を根掘り葉掘り
尋ねてしまう性質(たち)なんですが、ここに出てくる男女はそれを
ぐっと堪えてしまう。

相手の過去や秘密を無理強いに調べてしまうと、
今の幸せが去ってしまう、と思うのでしょうか。
もう、そう思えてしまうってだけで、
不幸な未来が垣間見えてしまってるんですけど。

結末はどれもこれも感動的。
こりゃどうにも駄目だ、と暗く読み進めていても、我らが主人公様は
そう来るか、なんて泣かせる結末がくる。
やっぱり市井モノはこうでなくっちゃね、てな具合に心底嬉しくなって
次の短篇に手が伸びる。

橋を舞台にしつつも、各作品の登場人物や設定が全て異なり、
橋の使い方や活かし方が実にうまい。

周平作品のベストに挙げる人がいるのも、大いに頷ける。
うんうん。






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