2008年01月 第252冊
-
田辺聖子 「セピア色の映画館」 集英社文庫
-
こう言っては非常に失礼なのだが、どうせ年寄りの「昔の映画は良かった」
評伝だと思って読み始めた。
しかし、確かにそう言う面もないでは無いが、昔と今を比べるのではなく、
いかにあの作品が素晴らしかったかを切々と伝えてくれる気迫に溢れている。
映画が大好きで、観まくった人ならではの映画への溢れる思いがひしひしと
伝わってき、あまり映画を観ない私も、これなら観て観たい、と思う事
しばしばだった。
ジェラール・フィリップ、長谷川一夫、シャルル・ボワイエ、
ダニエル・ダリュー、ゲーリー・クーパー、フランソワーズ・アルヌール、
モンゴメリイ・クリフト、田中絹代、オードリー・ヘップバーン、
ジャンヌ・モロー、シモーヌ・シニョレ、バート・ランカスター、
ジャン・ポール・ベルモンド、ジーン・セパーグ、勝新太郎、
マリリン・モンロー、キャサリン・ヘプバーン、ジェームス・ディーン
などなど。
映画ツウの人からすれば少しミーハーな選択かもしれないが、名作傑作を
著者ならではの審美眼で語っており、着眼点も少し逸れていて面白い。
戦後から六十年代辺りの作品(著者の青春時代)が中心であるが、
青春時代に感動した作品を、まるで今観てきたようにアツク語るんだから、
本当に素晴らしいんだろなと思わせる。
この一冊はしばらく座右において、本書で登場した作品をビデオで
一作一作、堪能してみようと思っている。