2008年02月 第257冊
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黒川博行 「カウント・プラン」 文春文庫
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黒川博行2冊目。
同氏の「文福茶釜」を読んでこらぁ面白い、と思っての2冊目なんですが、
あの面白さを知った後でこの本はチと詰まらんかった。
黒川初見なら、十分楽しめたのに。
短篇5編収録。
表題作「カウント・プラン」は、物数え症(計算症)の男の生態と事件が
クロスするミステリ。
さすがにこれは日本推理作家協会受賞作なだけに、面白い。
これがあるから、本書は読む価値は十分ある。
ちなみにブルックナーも物数え症で、彼のミニマム・ミュージック調な
パッセージも納得できる。
私はそんな症候群に同情しますが、本書で語られるこの計算症はつらい人生だろうな。
意味の無いことまで、気になったら気が済むまで数え続けなければならない。
誰に頼まれたわけでもなく、自分でも無意味だとわかっているのに、
数えざるをえない、と気付くと数え始めてしまう。
そんな男の生態が、実に上手く描写されている。
この男の話を、もっと読んで見たいな、と思う私はおかしいのかな。
「ダスト・ハンティング」「死人の毛髪」「色彩倒錯者」「女の友情から嫉妬」
といったアイデアを元に、他の4短篇は描かれている。
「ダスト・ハンティング」は変質者を中心に捜査がすすみ、これは面白いか?
と読み進むが、捜査側が没個性で、もう少し捻れば一挙に面白くなる素材なのに、
と残念に思う。