2008年02月 第258冊
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雫井脩介 「火の粉」 幻冬舎文庫
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こういう粗筋の本なら、直ぐ読んでみたくなるタチです。
〜あらすじ〜
ある裁判官が殺人犯に対し無罪判決を下す。
そいつは2年後、その裁判官の隣人として引っ越してくる。
あの時の公正公平な判決はありがたかったと、家族に対しても
親切めかして近づいてくる。
関係がうまくいっている時はいいのだが、その接近度がわずらわしくなって来る。
あんまり立ち入らないでヨ、といった態度を示した人間への猛反発が
異常なのが、後半分かってくる。
もちろん、裁判官の判決が正しくなかった事も・・・!
最近やたらと殺人事件が多いですよね。
私の子供の頃は、殺人事件なんてあろうものなら、一週間は
ワイドショウは同じネタでやっていましたよ。
それなのに今ときたら、毎日毎日何らかの殺人事件が起こっていると
言っても過言では無いほど。
事件が発見されていないケースも想定すると、もっともっと起こっているのかも。
裁判官の家族は5人家族。
裁判官、妻、司法試験に励むムカツク長男、その妻(この人が
後半狂言回しになってゆく)、その子供(裁判官からみれば孫)。
それぞれがそれぞれの問題を抱えており、それぞれの感情で動いてゆき、
シミュレーションとしては非常に「ありえる」流れ。
よくこういった異常性ミステリは、「そんな風に行動する人なんていない」
というケースがあるが、本書はその点、実にうまく考慮されている。
女性心理の描き方も巧みで、男性作家が女性をうまく描いている好作品。
難点は、本編565ページ。
ぶ厚い。
でも私は東海道線各駅列車に乗りながら読んだので、5時間くらいで
読み上げました。
5時間没頭できた面白さでした。