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2008年05月 第272冊
東海林さだお著  「キャベツの丸かじり」  文春文庫

東海林さだお  「キャベツの丸かじり」  文春文庫

週刊朝日に連載されていた「あれも食いたいこれも食いたい」から、
1987〜88年連載されていた分、35編。

社会人ならこの人を知らない人はいないだろうし、知らないって威張っても
この人の漫画を見れば「ああ、これかぁ」と言ってしまいそうなくらい
周知の漫画家・エッセイスト。
しかし一番言いたいコトは、この人の書くものは週刊誌の中に数ページ
あるからこそ映えるのであって、35編たっぷり固まるとツライ。
繰るごと繰るごと、著者の飽くなき食べ物への繰言が延々と続き、
美味しい小料理も数品なら味わいがあるが、35品も連続喰いはかなりツライ。

そうは言っても流石はショージ君。
どれもこれも面白いし、感心したりする。
特に東京の街やお店が出てくると、ああ懐かしい。

例えば、荻窪のラーメン。
丸信や丸福なんか出てくると、よく行ったねぇ。
親子丼の玉秀の行列も懐かしい。
行列に並んで食べた店って、どれも思ったほど美味しくなかった。
行列が長ければ長いほど、その先にあるゴールに期待が募り、
どれほど美味しくとも行列分の値段が引かれてしまう。

これは高い料理も同じコト。
高ければ旨くて当然なわけで、高いのにサービスが悪かったり
ちょっとでも質の悪さを感じると、高い金払ってんのに!と思ってしまう。
浅ましいのか?

クチャクチャ音を立てて食べる人を糾弾する一文がある。
その人はクチャクチャ音を立てるばかりでなく、貧乏ゆすりで音カタカタ。
ビールはジュルジュル飲むし、最後は爪楊枝で歯をシーハーシーハー、
チッチッチ。

しかしこの著者は、そんな人を注意せず観察し続け、ネタとする。
そんな人が増えた現代を著者は憂えているが、その場で注意することは
出来ない。

ちなみに私の父は、街中でいろんな他人に注意していた。
電車内で傘からしずくを落としてズボンを汚したと言っては大声で
怒ってたし、道中でゴミを捨てたと言ってはそれを拾って
その人に付きつけていた。

電話での勧誘が来ると本気で説教してたもんなぁ、
そんなモノ売りつけたらいかん、とか。
一緒にいると閉口してしまうが、そんな鬱陶しい親爺が近所に一人はいた。
それが我が父というのは、厳しいものがあったが。

当時は疲れる性格だと思っていたが、そんなオヤジは最近見かけない。
せいぜい後日、ブログで書いたり人に話したりして息巻いているくらいだ。
私もそんな面倒な事は出来ない。
こんな現代、下手に面と向かって言ったら、突然刺されたりするかもしれんし。

みんなどんどん自分だけ良ければ良し、という風潮が深まっている。

ショージ君は、一平凡な人が注意力満点で物事を観察したり
味わったりして出来たエッセイとなっている。






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