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2008年05月 第274冊
藤沢周平著  「驟り雨」  新潮文庫

藤沢周平  「驟り雨」  新潮文庫

表題作ほか人情市井もの短篇10編。
ネット界での感想は頗る良好でして、これほど大絶賛するほどなのか?
と、云うのが私の感想。

藤沢の市井モノは、素晴らしいとしか言えないのか?
約300ページの人情もの、どの短編もまあまあの出来で、十分藤沢モノを
楽しめるんですが、彼の代表作だとか、彼の中で一番好きです、なんて
ちょっと言い過ぎじゃぁねぇか?

まずは表題作「驟り雨」
悪人が盗みを働こうとしていたら突然の雨が。
小さな神社の軒下で雨宿りをしていると、様々な人間模様が過ぎてゆく。
何だか演歌歌手の「お芝居」のような設定で、芝居用台本を想定して
書かれたような話。

悪人は最後善人に変わっていく、というのも小ッ恥しいし、
出来すぎた白々しい話。
これしきで感動できるなんて、幸せな人が多いもんだ。

「ちきしょう!」
夫の事故死後、生活力の弱い女が男を掴まえながら生きてゆく世界に落ちてゆく。
それだけでも悲惨な話なのに、夜の仕事をしているうちに、
大切な一人娘の病気が急変。
そんな原因となった男をそのご街中で見つけ、
逆上した女は男に簪を突き立てる。

全くもって、当然の話だ。
しかし、おそらく女は殺人未遂として島流しにでもなってゆくのだろう。
弱い人間はとことん落ちてゆく救いの無い世界。
それなのに、作者藤沢は冷たい現実に終始する。
これを読んだ時は、もうこの本、放り出したくなった。
なんでこんな救いようが無い話しを書くんだ?

「泣かない女」
妻のある男は奉公先のお嬢様の婿になれるチャンスが巡ってくる。
奉公先の主人は腕の良い職人(主人公のライバル)を
婿にしようとしているし、主人公にはそもそも古女房がいる。
結婚しているし、奉公先の主人は別の男を婿にしたがってるはで、
主人公に勝ち目は一つ。
お嬢様の心だけに懸かっている(お嬢様はこの主人公が気に入っている)。
しかし古女房との離縁に踏ん切りが付かない男、
切羽詰って到々修羅場を迎える・・・。

最後の結末が、これまた男に都合のいい終わり方。
こんな馬鹿にした話しがあるもんかい、女にとっては。
挙句の果てに「夫婦ってえのは、あきらめがかんじんなのだぜ。
じたばたしてもはじまらねえ。」なんて男は女房に語るんだが、
じたばたしてたのはお前だろうが!
女房はちっともじたばたしてねぇし、ぼんやりしてるだけ。

藤沢周平が、よく分からなくなる作品集。






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