2008年06月 第278冊
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村上春樹 「ノルウェイの森」 講談社文庫
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正直、この歳になって初めて読みます、村上春樹。
むかし図書館で2週間借り、読む事も無く返却した苦い記憶があります、
ノルウェイの森。
出だしの古井戸ばなしで、なぁんか合わね、と思ったのかな。
次章まで読んでたら、憧れの東京の大学生ライフが始まってたのに・・・。
本書も古本屋で見つけて買って、1年くらい経った昨今、
突然思い立って読み始めた。
上下二巻、全六百ページ。
最初は一日五十ページ・ペースで読んでいたのですが、
主人公が東京の学生になったあたりから面白くてならん。
本書は大ベストセラーであり、昔から賛否両論なる村上春樹の
代表作ですが、私は非常に面白く読めた。
精神、死、恋愛、性。
青春はこういったことに関心が高く、みな一度は
考えたり悩んだりするものです。
考えて無さそうな人も多いですが、彼らなりに、
彼らのレベルで悩んでいるはずです。
そう考えると、こういった誰もが通り過ぎた恥部を全面に押し広げ、
多くの若者を中心に興味を惹かせたのは、やはりズルイと
言われる所以でしょうか。
しかし、それを認めた上でも、西洋かぶれ(音楽にしろ、文学にしろ、
酒にしろ)を享受した上でも、この小説は惹き込んでしまう力が大きい。
そもそも学生寮で、焼酎や日本酒でなく、ウィスキーを小瓶で飲む
貧乏学生なんか見たこと無い。
しかし不思議なもので、春樹の別の作品も読んでみたい。
村上春樹に対しては、これといった理由も無くこれまで読んだ事が
無かった作家ですが、これからは少しづつ読んでゆくでしょう。
しかしみんなが精神的に悩んだり、好きになったら早急にセックスに
辿り着き、死は生の延長にあるような世界にはいない。
ここらへんが少し「文学世界」どっぷりで、リアリティとは駆け離れていて、
微妙な感覚のまま読了。
でも、惹き込まれたのは、事実なんだよねぇ。