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2008年07月 第285冊
奥田英朗  「最悪」  講談社文庫

奥田英朗  「最悪」  講談社文庫

7月20日より青春18切符が発売されまして、
早速東海道を往復16時間ほど楽しんでまいりました。
片道約8時間の旅、各駅列車のお供に本は必需品です。
また、こんな時でもないと重たい本は読まんよな、と考え、
656ページの本書を選択(「白夜行」と迷いました)。

これだけの大長編なわけですが、意外や意外、
正味5時間くらいで読破してしまった。
文章も読み易いですが、なんといってもそのエンターテイメント性。

3人の一見無関係な男女のストーリーが交互に語られる形式で、
ギリギリまで3人の行動はダブらない。
それだけに働く職種や年齢、性別も異なりつつ、
3人を取り巻く世界やトラブルが面白い。
それぞれを個別にしただけでも3つの小説が出来上がるほどの出来映え。

しかもラストにはこの3人とその関係者が偶然にも終結し、
大事件を起こしてしまう。
事件後の彼らの心理描写や行動も丁寧な描き方だし、
結着後のそれぞれのエピローグもしっかりしていて、不満がない。

六百ページ以上も物語を共にすると、各々の将来が気になる。
たまに「あとは読者様それぞれのご想像にお任せします」なんて
終わり方があって、無性にイライラしてしまうが、さすが奥田英朗は
そんな逃げはしない。

656ページですが、5時間ちょい飛行機や電車に乗る予定がある方は、
是非旅のお供にどうでしょう。
各駅電車がちっとも苦痛にならずに済みました。






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