2008年08月 第290冊
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伊坂幸太郎 「グラスホッパー」 角川文庫
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もうこの何年も、書店では伊坂幸太郎が大人気だ。
この本を始め、伊坂作品の多くを買うことは買っているんですが、
こうやって読んでみたのは初めて。
若くして大人気作家でもあり、期待が大きすぎたのかもしれない。
しかし彼の文体は、さすがに低いでしょ。
何も小難しく格好つけて書くのが良い、と言うわけではないんだけど、
この人の文章はちょっとプロとは言えない。
そもそも彼の小説設定そのものが、規定概念を壊したところに
面白さがある訳だから、文体も一般的でないのかもしれない。
しかし活字中毒レベルには、ちっと
苦行とも言える文体(文章表現、文章レベル)かも知れない。
そこへ持って来て、本作品の内容。
伊坂作品の数々は、その特異な設定や思いも付かないアイデアで
話題をさらっているようですが、本作品は今一歩。
「殺し屋」小説!と云うことで関心を以って読み始めたんですが、
殺しあう流れに納得や関心が全然沸かない。
狂言語りの元教師の、殺された妻への復讐にもっと主眼と徹底性を
凝らせば共感できるだろうに、この元教師が頼りない。
一般人なんて所詮そんなもんかも知れないが、底力を発揮するから
小説として面白くなるのだし、カタルシスを得られるんだろうに。
アマゾン感想を眺めてみても、感想批評はバラバラ。
伊坂大好きっ子は絶賛してますが、ダメダメとバッサリやってる人もいる。
私もこの一作品で判断なんかするつもりはありませんが、伊坂幸太郎が
大人気作家で無ければ、これっきりで読まなくなる作家だったと思う。