2008年08月 第294冊
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小池真理子 「墓地を見おろす家」 角川ホラー文庫
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夏はやっぱりホラーでしょ、と思いたって読んでみた。
都心から20分ばかりの街であり、立派な新築マンション2LDKが、
なんと3500万円。
このクラスの物件なら、今でも倍前後は確かにするでしょう。
ナゼ、半値なのか?
駅から7分ほど歩けばこの新築マンションがあるのですが、
そのマンションを取り囲むように寺、火葬場、そして墓地。
私も半値だったら気にしませんが、朝起きて、カーテンを開けると
燦々とお日様が。
しかし眼下にはびっしりと墓石や卒塔婆が広がっている。
気にしないといっても、どうでしょう。
主人公一家は不倫の末に結ばれたちょっと複雑な一家。
今では可愛い女のコも幼稚園に通い、親子三人は幸せを絵に描いたよう。
しかしこの家庭が産まれるには、前妻の自殺があったからこそ。
前妻が「生きていても何も楽しい事はない」と言う言葉と共に首をつり、
その上に成り立った幸福な家庭、というのが本書の伏線。
前妻の怨霊が出てくるのか?
少しづつ怪奇現象がマンションに現れ、いわゆる地縛霊現象が
次から次へと起こるのですが、最期まで楽しめませんでした。
コワいかなぁ、こんな話、ってな感じ。
前妻を自殺にまで追い込んで掴んだ幸せ一家にとっては、
コワいんでしょうけど。
それを読まされる一読者は、「悪いことしたら、後が大変ねぇ」
てなくらいしか思わないんですけど。
挙句の果てには、弟夫婦の巻き添えが悲惨。
この弟は死んだ義姉に同情していただけに、どうして
地縛霊に捕り殺されなきゃならんのか、説明がつかない。
そもそも霊そのものが、説明つかないんですけど。
私だったら、死んだ前妻そっくりな隣人でも登場させて、
夜な夜な前妻が好きだった歌を歌わせたり、
前妻のアクセサリーなんかを廊下やエレベーター・ホールに
落としとくんだけどな。