2009年02月 第311冊
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和歌森太郎 「日本史の巷説と実説」 河出文庫
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どうです、面白そうな題名でしょう?
私はこういった歴史疑義モノが大好きで、
この本を見つけた時、即決で買いました。
義経ジンギスカン説とか、西郷ロシア亡命説とか、
まさかありはしないけどロマンを感じる巷説って、面白いですよね。
さてさて、本書はどんな巷説を検証するのかな?
全二十章仕立てで、初っ端なは「蜂須賀小六」。
いきなり戦国時代なんですね。
以降、戦国期以降の検証しかなく、義経伝説とか
南北朝秘話なんかは出てきません。
ですが、最近「新太閤記」を読んだばかりだから、
蜂須賀小六には感情移入も出来て、面白く読め始める。
お次は石田三成、その次は片桐且元といきますが、
次第に江戸時代ものになってゆきます。
伊達騒動、慶安太平記、佐倉宗吾、赤穂浪士、絵島事件、
天一坊、大岡越前・・・。
蜂須賀や片桐に付いて書かれた一文は少ないですから興味も沸きますし、
天一坊事件は幾つもあった、なんて分かって面白い話もある。
しかし、伊達騒動とか慶安の変なんかは、語り尽くされている。
赤穂浪士に至っては何を今さら、ってなわけで、次第に飽いてゆく。
後半は江戸町人、御三家と将軍、富籤興行、田沼意次、横綱、鼠小僧、
侠客、井伊直弼、江戸時代の天皇、勝海舟と榎本武揚。
巷説と実説の体裁は辛うじて残っていますが、
もうなんだか江戸時代ミニ知識集みたいな体裁。
今から二十年余昔の本ですが、今の今じゃぁ珍しくない
説話集になっているのが悲しい。
きっと編集者が、売れること第一でテーマを決めてったんじゃなかろうか。
著者は歌舞伎や相撲に造詣が深いんだから、もうちょっとニッチな分野に
絞って掘り下げていたら、いつまでも面白く読める本になったでしょうに。
「江戸期の相撲秘話」とか「江戸の歌舞伎哀史」なんかじゃ、
読む人も限られてしまうのかな。
歴史モノはどう書籍化するかで本の価値や売れ筋が大きく異なってくる。
難しいもんだねぇ。