2009年05月 第320冊
-
薬丸岳 「天使のナイフ」 講談社文庫
-
第51回江戸川乱歩賞受賞作。
少年犯罪、少年法、復讐、被害者と加害者。
非常に重い題材を満載に積んでいますが、実に良く出来た作品。
多くの場で語り尽くされていますが、私も一気読みしてしまいました。
両親を交通事故で失った男性主人公は、保険金を活かして
埼玉大宮でコーヒーショップのオーナー店長をしている。
幼い娘を保育園に送り、コーヒーショップで忙しく働く。
だが彼の家庭には、妻はいない。
数年前、13歳の少年三人組に、のどを掻っ切られ殺されたのだ。
主人公は今もその悲しみと怒り、恨みを忘れる事は出来ない。
でも、残された愛する娘のために、娘への愛情を
惜しみ無く注ぐために生きている。
そんなある日、妻が殺害された頃担当だった刑事がやって来る・・・。
出だしは助走がゆっくりしていて、少年犯罪と少年法の
ジレンマ中心で押し通すのかと焦らされます。
しかし刑事がやって来て、新たな事件が起こった事を
告げる頃から物語は転がり出す。
第二、第三と事件が続くが、妻や周りの人たちの過去が語られ出し、
物語は一気に多面性を帯びます。
中盤はどう転ぶのか全く読めず、しかも同時並行に事件も起こり、
主人公がちょこまか行動し続けるのにハラハラしっぱなし。
ラストと付け足しみたいな弁護士の余談、最後の最期まで話に
オチがあって、本当に感心。
430ページとボリュウムたっぷりですが、
ミステリ読書の醍醐味が堪能できます。
新人とは全く思えません。