2009年06月 第328冊
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伊坂幸太郎 「重力ピエロ」 新潮文庫
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映画化されたし、たまには話題作でも読んでみようか。
伊坂作品は「グラスホッパー」に次ぐ2冊目を読んだのですが、
私の感想はイマイチ。
書評で多いのは冒頭の斬新な主人公の登場、出生の悲しい秘密と家族愛、
そして連続放火事件やラストの衝撃。しかし、これまた多くの人が
感じているように、私も先が大体読めたし、読めたとおりの結末。
こういったミステリの多くはどんでん返しも用意されているんですが、
本書はナシ。直球勝負でミステリよりも家族愛優先で描かれています。
しかし、こんなにベタベタした家族って、違和感あるなぁ。
DNA鑑定をする会社で働く兄、格好良くて才能溢れるのに悲劇的な弟、
癌に冒された父、数年前に亡くなった母。兄の目を通して、仙台の街で
起こった連続放火事件とペンキ落書き事件が語られてゆく。
この小説はあらすじを書けば書くほど下らなくなるので、
もう少しサワリが知りたい人はアマゾン感想でも見て下さい。
問題は陳腐なミステリに家族愛をギュウギュウに絡ませた点ですが、
そこをどう感じ取るかで感想は全く異なる。
異常な経緯で誕生した弟を持つ家庭だからこそ、それでも弟の誕生を
望んだ家族だからこそ、こういった家族なんかもしれないし、
そんな家族があってもいいじゃなかと多くの人は待っていたのかもしれない。
私は待ってなかったけど。
「グラスホッパー」より文章はこなれて読み易くなってきましたが、
どうしてこれほど人気があるのかも不思議。彼の作品は他にも何冊も
買い込んであるのでいずれ読みますが、ちと面倒になってきた。