2009年07月 第335冊
椎名軽穂 「君に届け」(第8巻続刊中) マーガレット・コミックス
少女漫画に免疫の無い私が読んだら、とんでもない中毒を起こしてしまった。
「このマンガがすごい」(宝島社)という漫画ガイドブックが信用するに足る
と思い、2008年度版の第一位も興味を持って手を出した。
バラの花いっぱいとか、おメメが顔の半分くらいまで占める絵柄なんて
苦手ですが、本書の表紙はメッチャかわいい。もちろん中身も
スッキリした絵柄で、少女漫画の絵柄というだけで拒絶感が出てしまう人も、
本書なら心配は無いですよ。
でもね、そんな事は大した事で無い。
このマンガ、滅茶苦茶面白い。以下あらすじ。
高校生になったヒロインは、陰気な雰囲気ゆえなかなか友達も出来ず、
クラスに溶け込めない。まず、このどんよりした初期設定が少女漫画らしくない。
元気いっぱい、明るく溌剌!といった世界はマンネリだし、そんな明るい人生を
送っている人のサクセス・ストーリーなんかに興味持てへんやん。
少しマイナス面を持った普通の人が少しづつ変わってゆくとか、
何かウマくいっていない人が乗り越えようと足掻いているとか、
そんな等身大の話が面白いんだよね。
でもやっぱり少女漫画、さすがにヒロインはかわいい。
初期設定では、人を「ひぃっ!」と言わせるほど陰々とした雰囲気ゆえ
「貞子」(本名:爽子)と呼ばれるヒロイン。黒髪のストレートは長くたなびき、
前髪は眉まで隠して横一線。
描きようによっては深窓の令嬢みたいになるのに、著者はユーモア・センス抜群で、
随所にデフォルメされた貞子を挿入することで、友達のいない女の子をさらりと
描き進めてゆく。
早々に出てくるのが爽やかなこと限りなし!ってな男の子、風早君。
ここまで爽やかな人いないよと思いつつ、これが少女漫画の王道
だったことを思い出す。
こんな男子が私の隣の席に来てくれたらな♪って思って
読んでんでしょうね、中高生の女子は。
男子だって似たような青春ラブコメを読んでんだからお互い様ですが、
中盤ともなると風早君も等身大の高校生らしい心情が描かれてゆきます。
この辺のリアルさ、爽子も風早も基本はマジメ、というのが逆に今の時代、
共感と人気を得ているのだと思います。
現在著者は産休のため休載中ですが、今書店に売っている
別冊マーガレット8月号には、特別に50P載っています。
本格連載復活は10月号だという事ですが、「届け、届け、私の思い」と
本当に先が読みたくてしょうが無いマンガです。
結局最後は両想いになってメデタシメデタシなんだろ、
なんてヤサグレちゃいけません。
この「君に届け」は、そこから先も描かれそうな予感がするのです。
付き合う事に成功できた「ラブコン」が、その後もずっと描かれたように。
今の少女たちは、付き合った後の行方にも興味大ですから。
互いの想いを伝え合えた二人に、付き合い出してからもいろんな邪魔者が
入ってきたり誤解やすれ違いが起こりそう。
そういった困難を乗り越える事も、真の恋愛なんですよ。
秋にはアニメ化もされるという事で、アニメのグレード次第では更なる
人気漫画と昇華しそうですが、そんな人気に浮き足立つことなく、
恋愛の喜びや哀しみを余す事なく、描いていって欲しい。
とりあえず、9月13日発売予定の別冊マーガレット10月号(連載再開)
が待ち遠しい。
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