2009年08月 第338冊
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吉村絵美留 「修復家だけが知る名画の真実」 青春出版社
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絵画修復専門家による、名画修復の裏話。
好きだったら、ほとんどの人が面白いと思える本なのではないか。
以前、黒川博行「文福茶釜」を読んだおり、
美術界の闇で蠢く贋作家の話がやけに面白かった。
いかにして贋作を作ったり、それで騙すとか。
とんでもない犯罪小説だった。
本書はその逆で、真作の修復を手掛ける専門家によるお話。
修復の過程で、真作と思われていたものが実は贋作だと解かったり、
真作ではありえない理由を説明したり。
フランスの名画なのに日本製のキャンバスが貼ってあるとか。
国内では岡本太郎作品の修復を数多くこなしているし、
海外の名作、ピカソ、モネ、ルノワール、ローランサン・・・など
数え切れないほどの画家と関わっている。
油絵とは面白いもので、丹念に絵の具をはがしていくと、
塗り重ねられた下に描かれていた絵が現われたりする。
ある画家が晩年に、自分の壮年期のカラー作品の
上から白黒で絵を重ね塗りしてしまう。
しかしその画家の死後、妻が塗り重ねた白黒を取って欲しいと
依頼してくる。塗り重ねた絵の具を取ってみると、そこには・・・。
ね、面白いでしょ。
少し自慢、少し商売も入ってるけど、そこはご愛嬌。
絵画にまつわる、修復家ならではのトリビアがいっぱいです。