2009年08月 第339冊
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角田光代 「ピンク・バス」 角川文庫
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著者の角田光代さんてテレビにも出たりして、
ふわふわほんわりした柔らかな感じな人で、なかなか好感度高だった。
もしそんなビジュアルな気持ちで角田作品に手を出すと、痛い目に合う。
なんて言うかな、なんともいやぁな気分にさせてくれる「作風」。
表題作「ピンク・バス」約九十ページと、
「昨夜はたくさん夢を見た」七十数ページの中短篇2本。
読みやすいよね、と始めたらこれが重い。
文体はやさしいのだけど、書いてある内容と云うか
世界と云うか、起こる事象がヘンなのだ。
ちょっと病んでる。
「ピンク・バス」は妊娠初期の女性が主人公。
妊娠初期女性がヒロインと云うだけで、
なんだか危うい予感を起こしますが、やっぱりヘンな展開。
旦那の消息不明だったと言う姉が突然やって来て、居候を決め込む。
それでなくとも初めての妊娠でヒロインは不安で一杯なのに、
心無い発言や行動(居候)でヒロインは不満で一杯。
通常の展開だと、「でもやっぱり、そんな義姉の本当の優しさに心が
ほだされてゆく」展開が待っているのだが、角田光代はそんなに甘くない。
ピンク色のバスが来て、どうやら姉はそれに乗ってゆくと言う。
バスには学生時代浮浪者経験を伴に体験した男性が
乗っているようで・・・浮浪者経験?
そもそもこのヒロインはヘンな人で、いそうなようでなかなか
そこまではいないよ、というような人。
中高は不良で、大学入学後はナゼかお嬢様スタイル。
そんな自分らしく無い毎日で出会うのが、浮浪者そのものの青年。
彼との強烈な浮浪譚が挿入されてゆき、話の展開は一層判らなくなる。
読んでいても絶えず先が不安で、ちっとも安心して読めない。
冒険小説のはらはらワクワクでなく、何とも言えぬ
将来の不安感というか、危険な香りがいっぱいする展開。
こういった独特の世界に惹かれる人も多いのだろうけど、
私は遠慮しときます。
もう一篇「昨夜はたくさん夢を見た」も、永年の彼氏がインドへ
放浪して行ってしまうという、不安な話。
どうも彼氏がヘンな方向に目覚めて、危なくなってきた末に
インドへ行ってしまう。残された「私」も取り乱す事もなく、
アンニュイな日常を語ってゆく。
うーん、変わってる。