2009年09月 第342冊
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佐木隆三 「殺人百科」(2) 文春文庫
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今から二十年以上前に発行された文庫本なので、
なかなか古本屋でも見つからない。
ようやくこの第2巻と第4巻が見つかったが、第3巻が未だ見つからず。
ネットで入手してもいいけど、「たまたま古本屋で見つけた」のが好きなんだよね。
ですから最近古本屋に行くと、必ずチェックするのが佐木隆三。
最近の社会は一日一殺人事件があたりまえと云う悲惨さだが、
本書が描く七十年代だって殺人事件だらけ。
よく
「最近は物騒になった。むかしは隣り近所の気心も知れて、安全な社会だったのに」
と云う人が多いですが、昔だって怖い事は一杯あったよ。
更に恐ろしい社会にしてしまった責任は、私達全員にあるのですから、
そこんとこは忘れちゃいけません。
七十年代といえば大阪万博の頃だが、この頃の事件といえば
大阪の銀行で起こった人質殺人立て籠もり事件。
あの梅川昭美が犯人だった凄絶な大事件だ。
本書には八話の殺人事件が収められている。
どの話も強烈なルポルタージュで、ここまで酷い事件が、
昔だってあったのか、と唖然としてしまう。
昔の人は根は優しかった、最近の人はおかしくなっている、なんて云う人がいるが、
昔も今も恐ろしい事件は綿々と続いているではないか。
娘が実父を殺すという遣り切れない殺人事件だが、真相は、
父が娘を妻にして子供を何人も孕ませていたという鬼畜な所業が原因。
本当に身の毛もよだつ、恐ろしく哀し過ぎる事件です。
子供があんなに欲しかったのに、障害児を育てるのに疲れた母親。
一人の男に惚れ抜いてしまったばかりに殺人を続けた姉妹。
極めて従順にして素直なりと言われたが、人を平気で殺せた男。
温泉旅館の女将に納まるはずが、旦那も妻も殺してしまった大年増。
雀荘ママが知人を銃殺してしまった経緯。
上記の中でも、最後の雀荘ママの話は圧巻。
ルポルタージュとしても、もの凄い読み物です。