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2009年09月 第345冊
東直己  「フリージア」   ハルキ文庫

東直己  「フリージア」  ハルキ文庫

面白くてならない。
今年最大の収穫物、これを読んで来なかった人生を後悔!

去年の春、同著「残光」を読んで、いたく感動した。
ところがこの「残光」、続編ものだった。
続編とは言え独立した話になっており、どうにか「残光」だけでも
ストーリーは把握でき、十二分に堪能できるのだが、それだけに
余計前作の内容が気になった。
前作と云うのが本書「フリージア」。

一から十まで至れり尽くせり描かれていない。
高度な表現技法のため、モザイク模様みたいに不明点が残る構成。
主人公榊原健三は元ヤクザ、今は北海道の山奥で木彫り人形を製作して、
ひっそりと独りの生活を送っている。

そこへ昔の兄親が力を貸して欲しいとやってくる。
素直に頼めばいいものを、兄親は榊原が最も大切にしている女性を
チラつかせて同意を迫る。

実はこの榊原健三、究極の殺人マシーンなのだ。
もうその強さといったら痺れるほど格好良く、彼のダンディズムは
若き頃の高倉健を想定して描かれているようだ。

榊原はむかし、愛する女多恵子と伴に極道の世界から足を洗う。
相当な犠牲を払い、伝説まで残して足を洗ったのにも関わらず、
榊原は多恵子とは別れている。

榊原は北海道の山奥へ独り、多恵子はどういう曲折があったのか不明だが、
平凡なサラリーマンの主婦に収まっている。
関西資本が北海道制圧に乗り出した頃、多恵子は夫の転勤と伴に
北海道へ戻ってくる。

闇の世界は殺人マシーン榊原を我が陣営に取り込むべく、
多恵子に触手を伸ばそうとする・・・。

愛する女を守るため、榊原のアクションシーンが堪らない。
彼の周りの脇役たちもキャラが立っており、各派閥の親分や、
むかし榊原の薫陶を受けたはずの中堅、彼を独自に追い続ける刑事、
出前をしながら情報を集めている男など、多士済々なのだが誰もがイキイキと動き回り、
一行一行が後半に影響してくるので、久々に熱くそれでいて真剣に読み込んだ。

私は一日四十分くらいの読書で五十ページ読むんですが、
本書は三十ページくらいしか読み進めなかった。
もどかしいくらい先が読みたいのに、一行一行に重みと
深い意味があるので、じりじりとしか進めない。

これこそ読書の醍醐味。
降りるべき駅も通過して、電車を乗り過ごしてしまう事もありました。






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