2009年11月 第356冊
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山本善行 「関西赤貧古本道」 新潮新書
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本が好きな人、特に古本巡りや古本屋で買うのが好きな人(わたし)
にとっては、大いに興味ある一冊。
それゆえに同類相食むというか、好き嫌いがでそうな一書。
似たような作家岡崎武志は全く受け入れなかったが、
この山本氏は非常に良かった。
二人は対談集なんかもあったりして似たようなものなのに、
岡崎氏はダメで山本氏はイケるという、我ながら不思議な感想。
おそらく京都在住、関西を根城に日々古本屋巡りをしている著者の行状を描く。
夕方からは塾講師をしておられ、日中は古本。しかも店頭百円均一台を
中心とするゆえに「赤貧」と書名にしてあるわけだが、毎日毎日古本を買い、
当然全て読み切れるわけもなく、家中に古本が溜まってゆく。
少し私と似ている。でも大きく一点違うところは、
読んだ本を私は処分してしまうこと。
CDは聴いたからと云って一度きりしか聴かないはずもないので
売らないが、本は一度しか読まない。
今まで2度3度と読み返した本は数えるほどしかない。
だって、読みたい本は無限にあるのですから
(現在9百冊ほど読み待ち本がストックしてある)。
年に数回、新幹線に乗って東京の古本屋巡りに遠征に出掛ける
エピソードが微笑ましい。私も年に十回ほど東京に出て、
コンサートを聴き、ディスクユニオン(中古CD屋、クラシックが強い)、
ブックオフ巡り(アキバや要町、五反田、馬場、吉祥寺等)をするのが無上の喜び。
古本屋だけを巡っていないので、私と完全に一緒ではないし、
いつも新幹線で行ける筈も無いのがかなり違うが、あのワクワクした高揚感は
大いに共感できた。
著者の名前でググッテみるとブログ(古本ソムリエの日記)があり、
なんと京都で古書店「善行堂」を開業されていた。
本書ではまだまだ古本漁りを楽しむべく古書店開業には時期至らず
(本書は2004年初版)とあったので少し驚いたが、京都に行った際は
寄ってみたいと思った。
著者は戦前戦後の文学マニアしか知らないような今となっては
消えてしまっている作家に関心大で、正直私は上林暁という作家は知らなかった。
でも、そういった世間に知られていないものを追い求める気持ちは分かるつもりだ。
私が今一番関心のある作曲家はマリピエロとかアッテルベリだし、
クラシックの世界でも知っている人は知っているし、価値の解る人は
少ないけどいるのがこの手の世界だからだ。
一度は上林暁の本を読んでみたいな、と思っている。