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2010年01月 第359冊
三野正洋  「日本軍の小失敗の研究」   光人社文庫

三野正洋  「日本軍の小失敗の研究」  光人社文庫

これは面白いですよ、題名だけでも心引かれるインパクトなのに、
内容は期待を上回る面白さ。
ついついネットで、著者の他作品を探してしまった。
そうするとあるわあるわ、もうベテラン作家さんなんですね、
贔屓にさせて貰います。

実は最近、ゲームに勤(いそ)しんでおりまして。
いえいえ、ドラクエとかFFとかじゃありませんよ、やったことないし。

それよりも私が昔から好きなのが、戦史モノ。
それこそ昔はボードゲームがあったじゃないですか、小学生のころ
日本統一戦国時代みたいなボードゲームがあって、あれが開眼でした。

それまではガンダム、ガンダムとはしゃいでいたお子様でしたが、
あのゲームを友達の家でやって以来、
なぜか吉川英治の三国志全十巻(六興出版)読破。

戦国ボードゲーム(自分は朝倉を選択しました)をやったのに、
なぜか三国志。でも歴史も読書もよく分っていなかった子供のチョイス、
でもそのお陰で最初の本格読書が吉川英治(偶然)だったんだし、
十巻読破が自信につながり、その後は読むは読むは、現在に至るわけです。

そんな流れなんで当然ゲームも「信長の野望」(コーエイ)
好きなんですが、一年前に知ったのが「HOI2」。
「ハーツ・オブ・アイアン2」という第二次世界大戦を
フルメイキングした本格シミュレーション。

10年12月第3弾が出たようなんで、知ってらっしゃる方もいるかも。
戦国史や時代物(江戸時代)を好物に読んできたので日本史は得意
なんですが、昭和史(戦前戦中期)は弱い。
特にWW2の知識はあやふやで、読むこと知ることの多くが新鮮で、
特にこういった解釈モノは涎が出るほど関心大。

本書で採り上げられている歴史秘話は三十項目前後あるのですが、
さまざまな知識に裏付けされた人ならでの読み応えがある。
・海軍と陸軍は、情報交換せず開発競争に走っていた。
・ドイツから技術情報を膨大な資金で、陸海軍双方が同じものを購入。
・陸軍も潜水艦や航空母艦を建造していた。
・航空機開発工場から飛行テスト用飛行場までの距離が離れすぎている
 ので牛車で運んだ。

飛行場と研究開発施設はセットであれば良いだけ思うのですが、
当たり前なことが当たり前じゃないとこが世の中にはままある。
・悲劇の特攻の実際の成果と、アメリカが多用した有効爆撃方法を
 なぜ日本軍は採用しなかった。

コスト削減や効率化重視の現代社会では、戦闘機の装備一つとっても
不思議なことばかり。

たとえば日本軍の戦闘機は、7.7ミリ機銃×2挺、
20ミリ機銃×2挺だとすると、アメリカは12.7ミリ機銃×6挺。
7.7ミリや12.7ミリでは打ち抜けない20ミリ機銃を備えたい
気持ちは分るが、7.7ミリと20ミリは弾も違えば機銃そのものの
構造も異なる。

ところが米軍は12.7ミリで統一しているから、弾も一緒なら
機銃そのものも一緒。7.7ミリの弾はあるけど、20ミリの弾は
不足したとか、7.7ミリの機銃が故障したからスペア部品が
欲しいのにサイズが違う20ミリ機銃のスペア部品しか残っていないとか。

そういった事が、12.7ミリで統一している米軍機は発生しない。
なんという合理的。

でもね、当時の人は目の前の要望に応える事で必死だったんでしょうね。
戦闘機程度なら7.7ミリでも十分だが、基地攻撃や大型爆撃機相手なら
20ミリ機銃が必要。だからといって20ミリ機銃4挺にしたら機体が
重くなりすぎて、スピードや機動性が落ちてしまう。

ぐだぐだ言うな、効率性最優先、とトップが徹底してくれてたら
良かったんだろうけど、あっちの派閥はこうしろ、こっちからは
こういう要望が、両方の要求を織り込んでおくしかないか・・・。
いかにも日本的仕事であり、今も日本中で行われている折衷案。
現代日本にも教訓となる話が多い、しかも面白い。






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