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2010年02月 第362冊
吉田秀和  「音楽」3   朝日文庫

吉田秀和  「音楽 展望と批評3」  朝日文庫

1970〜80年代に、朝日新聞に掲載された吉田氏の芸術批評。
本書はその最終巻、78〜81年の音楽展望と音楽会批評が
約四百ページにわたって掲載されている。

初期(第1巻)中期(第2巻)までは音楽中心で、そのほとんどが
クラシック音楽についてで満足だったが、後期(本書第3巻)では
芸術全般に範囲を広げて語られている。

町並で聞こえた三味線の情緒とか、狂言鑑賞とかいったエピソードも入り込み、
面白いと思う人も多いだろうが、私としては散漫な印象を受けた。

吉田氏もクラシック評論家として突き進むのか、芸術全般の
オピニオン・リーダーとなるべきか迷っていた時期だったのかもしれない。
クラシックだけでなく狂言やシルクロードなど吉田氏が当時好奇心を抱いた
トピックスも織り交ぜてあり、新聞の編集部誘導もあったのかもしれない。

本書記事が書かれて約三十年。
当時の吉田氏の見識は当たりもあればはずれもある。
ポゴレリッチの異才は早々に見抜いているが、彼が絶賛してきた
日本女流ピアニストのほとんどが現在大成していない。

当時は誰もが愛したベームも今は忘れられつつあるし、吉田氏が評価した
レヴァインのマーラー演奏を今も聴いている人はいるのだろうか。
栄枯盛衰とはよく言ったもので、時代とともに流行り廃りのあるものの
評論は難しい。






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