2010年03月 第365冊
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檜山良昭 「北太平洋の狼出撃す」 中央公論社
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仮装巡洋艦「神鏡丸」という架空仮想の軍艦が完成活躍していたら、
というイフ戦記。
この仮想巡洋艦とは、外観は貨物船の7126トン、しかし内部には
14センチ砲や連装高角砲・連装魚雷発射管などを備えている。
しかも恐るべきは零式水偵12機を搭載し、ちょっとした軽空母の
戦闘力を持たせたのだ。
時は真珠湾攻撃直前の大湊軍港から物語スタート。
海軍の中でも、いわくつきの男たちばかりがこの軍艦に集められてくる。
主人公となる航海長は常識人で描かれているが、上官に対してズケズケ
具申してしまうので出世コースから外れてクサっている。
艦長は豪快で軍上層部の開戦派に対しても批判的で周りをハラハラさせている。
兵達はならず者半分、新兵半分と航海や戦闘が無事出来るか不安な状態。
しかし練兵もそこそこに、艦は目的も明示させず出航。
アリューシャン列島近くまで来た頃、真珠湾攻撃と合わせて、
ダッチハーバー奇襲攻撃という作戦内容が開示される。
零式水偵12機で、ダッチハーバーに建設中のレーダー基地を叩く
というのが作戦の主目的。
作戦そのものは大成功に終わるが、そのあとの北太平洋作戦が試練に
継ぐ試練。結局は無事帰還できるんだろうと思い読むのだが、
やっぱこういう海戦バトルは面白い。
もしも真珠湾攻撃に合わせて、たった一艦の仮装巡洋艦が別地点を
奇襲攻撃していたら、というシミュレーション小説であり、
随分小粒なストーリーではあるが、十分現実的にありえたろう話であり、
こういった奇襲を各所であの手この手とやっていたら面白かったのに、
と思ってしまう。
題名がよく分らないので、いっそ「仮装巡洋艦ダッチハーバー奇襲作戦」
とかにしていたら、もっと沢山の人に読まれるんじゃないかと思う。