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2010年03月 第368冊
長山靖生  「おたくの本懐」   ちくま文庫

長山靖生  「おたくの本懐」  ちくま文庫

単行本として初版された時は、「コレクターシップ」。
本書副題は、「集める」ことの叡知と冒険。
「コレクターシップ」だと「?」と思う人が多かったのだろう、
敢えて注目を引く「おたく」という言葉に代えたが、
本書の真髄をズバリ言い表しているのは「コレクター」。

「コレクター至上主義」とか「コレクター魂」といった題名の方が、
言い得て妙なのでは。

私自身、クラシックCDと古本のコレクターでもあり、
おたくでもあるので(自分としてはマニアだと主張したい)、
「おたく」という語感は嫌な気がする。

「おたく」と名の付いた本を書店レジに持っていくのも気が引けるし、
なんとなく読む気もしない。世間で言われる「おたく」ほど、
私みたいな感覚の人が多いのではないだろうか。

だから本書を買って5年以上経った今般、本書をようやく
読み出したのだが、これが意外や意外、面白かった。
なぜなら「コレクターシップ」について書かれたモノだったからだ。
そうならそうと、どうして書名にしない?と思ったくらいだ。
本書では過去の燦然と輝くコレクターたちの足跡や偉業を列記してゆく。

最初はお大尽や成金によるパトロンの成果として
コレクション美術館が出来てゆく過程などが述べられてゆく。
結構面白い例示が多い。

中盤は本書の本領発揮、市井の貧乏人が爪に火を灯して無名の作品を
収集してゆき最終的には再評価されることによって一大コレクションと
なってゆく話などが紹介される。

これですよこれ、こういう事が貧乏人でも可能かもしれないところに、
コレクションは夢とロマンがある。

私が集めているのはCDとか文庫本なので、数十年くらい経っても
ちっとも価値は出て来ないどころか、十年後には本もCDも
完全電子化されてるかもしれない。

過去のCDや書籍も電子化されて、現物は無用の長物に
成り果ててゆくかもしれない。

まぁ、集めたものをカネに代えようなんて思ってないから
どうでもいいけど、自分が集めたものが価値あるものに
高騰してくれることに、コレクターは自尊心がくすぐられるのだ。

この人は今、新書から続々と本を出しているが、どうやらこれが
処女作のよう。
私にとってはかなり面白い着眼点なので、他の本も物色してみたい。
他の作品も読んで見たい、と久々に思った。






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