2010年04月 第371冊
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稲垣史生 「考証風流大名列伝」 新潮文庫
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茶道誌「淡交」に連載された徳川期の風流大名を描いた短編集。
道理で、茶の湯を無理矢理こじつける箇所が気になった。
徳川光圀(水戸徳川家)
徳川宗春(尾張徳川家)
伊達綱宗(仙台藩)
井伊直弼(彦根藩)
織田秀親(和州柳本藩)
前田吉徳(加賀藩)
小堀遠州(江州小室藩)
安藤信正(磐城平藩)
柳生宗矩(和州柳生藩)
松平不昧(雲州松江藩)
浅野長矩(赤穂藩)
島津重豪・斉興・斉彬(薩摩藩)
有馬頼貴・鍋島勝茂
風流大名と云われるだけあって、どの名前も知っている人ばかり。
さすがに黄門様や徳川宗春あたりは知ってるし、
伊達綱宗の高尾太夫は有名すぎる話。
安政の大獄・桜田門外の変の井伊直弼や、
将軍家剣術指南役の柳生宗矩、忠臣蔵の浅野長矩、
幕末薩州で必ず出てくる島津三代。
このあたりは大体知っていたが、井伊直弼と
村山たか女(兄でもあり先君でもある井伊直亮の側室)の
禁断の恋はほとんど知らなかった。
本書の面白いところは超有名大名以外も丁寧に
描かれていること。織田秀親、前田吉徳、小堀遠州、
松平不昧(この人は少し有名)あたりを
スラスラ話せる人は少ないのではないだろうか。
小堀遠州などは作庭家として覚えていたが、
茶道誌に連載されていただけあって、
茶道家遠州として描かれているのが面白い。
忠臣蔵が好きな私としては、浅野内匠頭を赤穂藩の
起こりから書いているのも新感覚だった。
稲垣史生はむかし一〜二冊読んだ記憶があるが、
今回読んでみて改めてその面白さを感じた。
早速ネットで他の著作を探ってみたが、
あまり入手可能な文庫本が少ないようだ。
もっと多くの単行本を文庫化したり文庫復刊して欲しいし、
題名や表紙次第では十分売れる内容が多いように思う。
また、ふつう巻末の解説は著者への賛辞で締められているが、
本書は歯切れの悪い解説であり、解説者の譲れない一本筋
みたいなものを感じて、面白く思った。
こういった解説は珍しいし、よく載せたもんだ。