クラウドサービスとは?
2010年05月 第374冊
川島誠「800」角川文庫

川島誠  「800」   角川文庫

陸上競技800m走に青春をかける男子高校生2人と、
彼らの周りの女の子3人の青春群像劇。

約280ページのうち、序盤100ページあたりまでは展開が面白く
どんどん進む。

中盤100ページは、正直ダレる。
高校一年生最初の夏休みのそれぞれの行動が描かれるんだが、これまでの
突っ走るような展開からまったりした夏休みが描かれ、それが逆に終盤の波乱に
繋がる雌伏なのは最後まで読み切ったら分るんだけど、読んでいる最中はダレた。

終盤は滅法面白い。
恋の行方と、800走レースのラストスパートが相俟って、敢えて白黒つけない
締め括りも、かえって感慨深い余韻に成功しており、読後感が実にいい。

鼻に突く理論派秀才ランナーと、あっけらかんとしていて抜け目のない
野獣系ランナーの二人が交互に語ってゆくという、対照的な体裁。
一人称だとライバルの心理が想像になってもどかしい事が多いが、
本書のW主人公制は各々の心の動きが交互に描かれて、中高生たちなら
きっと夢中になるはず。

中高生とは全く違う私は、さすがにここまで解放された性行動には
ついていけなかったが、それを大きく差し引いても面白い小説だった。
ぱくぱく読んじゃった、と認める。

ジュブナイル小説にしては上質すぎるし、文学性も高い。
京大卒というインテリが随所で活かされていたし、親しみと好感の持てる
野獣系高校生中沢の語り口が同じ著者から生まれているんだから、たいした筆力。

角川文庫から出ているのも「いかにも!」という感じ、さすがカドカワ。
著者のまったく違った世界モノも、読んでみたい。






inserted by FC2 system