2010年05月 第377冊
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出久根達郎 「漱石を売る」 文春文庫
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夏目漱石を売るとは何事?と思わせる題名。
永く古本屋としてやってきた著者は、古本や古本屋をネタにした
エッセイや作品が多いし、それがまた真骨頂であります。
表題作「漱石を売る」も古本屋として、漱石自筆のものを
売買したときの出来事がネタです。古本屋ならではのネタばかりで、
古本好きな我々にとっては楽しい限り。
ただし、中盤からいろいろな雑誌に掲載された雑文やエッセイが
載りはじめ、俄然つまらなくなってしまった。
特に著者の身辺雑記や家族の事を採り上げたエッセイが今一で、
この人は古本関連を書かせれば筆が冴えるだけに、この落差は残念。
十ページくらいから2・3ページくらいまでの掌編51作。
古本屋が大好きな人は、前半までは大いに堪能できます。