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2010年06月 第383冊
金聖響「ロマン派の交響曲」

金聖響  「ロマン派の交響曲」  講談社現代新書

金聖響と玉木正之の共著、になっている。
ロマン派の作曲についてレクチャーしている本文は金の著述であり、
このレクチャーが本書全体の七割ほどを占めるのですが、前後や合間に
配した玉木正之との対談が意外と良い。

前作「ベートーヴェンの交響曲」の時は玉木が小判鮫のような気がしたが、
本書ではクラシックに対する本心を堂々と開陳しており、金より玉木の方が
ズバズバ言ってのけている。否、金が良い子ちゃんしすぎて面白くない。

結局、金は楽譜至上主義、クラシックとして現代まで生き延びてきた作品は
どれも素晴らしい、という論調。楽譜から更に奥を読み取って、
そこに自分の強烈な意思をフリカケた巨匠演奏は批判的。

これが、私の嗜好と全く相容れない。
楽譜至上主義ということは、作曲家こそ神と神格化し、現代までの変遷の中で
更に改良や工夫が出来る事も「そんな工夫は作曲家在世中は存在しなかった。
よって作曲家によかれと思って加工するなんてナンセンス」といった流れに
なってしまう。

ここは人それぞれ考えが微妙に違ってくるところ。
私みたいに、より良くなるんならいろいろチャレンジした物を聴いてみたいと
思う人もいれば、作曲家が想定していなかった改変は行き過ぎだと思う人だっている。

ただ、金の原典主義はかなり強い。
そこを良しと思う人も多いだろうが、私はダメだった。

2005年12月、金聖響指揮千葉大管による演奏会を聴いているが、
この指揮者に対する強烈な印象は無かった。
学生オケがプロコ5番を敢行した事に興奮しており、
金の指揮振りや解釈に目を見張った記憶は無い。

2008年5月には、名フィルを指揮したシベリウス5番を聴いている。
この時の感想は最悪で、ケチョンケチョンに書いている。
たった2回の演奏会で断を下すのは残念だが、どうも相性が悪いらしい。

こういった「指揮者が交響曲作品について論じる」文章は非常に
ためになるし、書物としてはなかなか面白かった。
著者の思想が全然受け入れられない点を含めても、楽しめた。
これは逆説的に考えると、相当なモノとも考えられる。

「ロマン派の交響曲」には、下記作曲家とその交響曲が登場し、
レクチャーされてます。

シューベルト、ベルリオーズ、メンデルスゾーン、シューマン、
ブラームス、チャイコフスキー。

ちなみに、前作「ベートーヴェンの交響曲」はブックオフで
しばしば見つかります。そこそこ売れた事実が非常に良く解かります。

一方、本書「ロマン派の交響曲」はブックオフを五十店ほど回りましたが、
見つかった例(ためし)がない。どうしても読みたかったので、
760円払って新品を買いました。滅多に新品を買わないので、
意地悪な感想になったのかもしれない。






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