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2010年08月 第395冊
東直己「悲鳴」ハルキ文庫

東直己  「悲鳴」  ハルキ文庫

六百ページを超える大長編ハードボイルド、しかし読み進めるに従って
残ページが減っていくのが愛おしい。

目茶目茶面白いミステリを読んでいる時だけ味わえる、
「いつまでもこの世界を堪能していたい」という独特の欲求。
長編でここまで読者を喜ばせるとは、本当に私と東直己の相性はいい。
ミステリ作家で新刊チェックしているのは、この東直己と黒川博行、
奥田英朗あたり。

本書は私にとって十冊目の東直己。
十冊も読んできたら流石に断定してもいいんですが、
東直己は間違いなく面白い。

どうしてこの人が、東野や宮部や佐々木のように
大ブレイクしないのか不思議。
やっぱり直木賞あたりを取らなきゃ、世間は注目してくんないのかねぇ。

東作品としてはご存知私立探偵畝原が、冴えない浮気調査を
ブツブツ言いながら物語はスタート。

六百ページ以上の大長編としてはお粗末過ぎる冒頭に
苦笑してしまいますが、こういった冴えない日常から話が
進むところが、後先の大展開が想像できてワクワクする。

キレる少年達の喧嘩を仲裁することで、題材は少年犯罪か?と
思わせておいて、話はどんどんズレてゆく。

世に言うクレーマーとかイっちゃってる人達をうまくストーリーに
絡み合わせて、でも真相はそこじゃない、という東作品独特の展開が
今回も冴える。

脇役達も少しづつ成長し、ラブストリーも早く成就しなよと気を揉む。
しかし、主人公の娘も少しづつ年頃になってきてんだから、
そろそろ誘拐なんかに気をつけた方がいい。

悪い奴等を捜査してゆけば、当然向こうはこっちの痛い所(家族)を
突いて来るのが定石。暢気に登下校している娘が狙われるかも、
と、どうして対策打っておかないか不思議。

対策は打ってたけど、強襲されて攫われたといった流れにくらいした方が
リアルになると思う。

後半はダンプ轢逃げ事件の話、あのリアル感はきっと実話を
基にしてるんだろう。

一つのエピソードとして出てくる話なんだけど、凄く衝撃的だった。
小さな話の一つづつが、どれもリアルな積み重ねで、こういった手法が
自分にとってはピッタリ来てるんだと思う。






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