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2010年08月 第396冊
中嶋繁雄「名君・暗君 江戸のお殿様」平凡社新書

中嶋繁雄  「名君・暗君 江戸のお殿様」  平凡社新書

中嶋繁雄の本が好きで、見かけたら買うようにしてる。
この読書感想を始める前にいろいろ読み終わってるんで、
「日本の名門100家」(正続)など凄くツボに嵌った着眼点でした。

日本史の見方として現代人が忘れがちなのは、「お家」そのもの。
どうしても坂本竜馬とか徳川家康といったように、人物個人で現代人は
考察してしまいますが、これは現代人の個々人の尊重を重く見すぎる事に
よるものだと思う。

昔の人がある人物を判断するに置いては、「どこの家の人間か」で
その人物の半分以上の評価が固定されて、それを基盤にアイデンティティが
加味されるに過ぎなかった。

「何々家」の人間ともあろう者が、こんなはしたない事をして、
ご先祖様に申し訳ない。なんて言い方を昔はしたもんです。

だから、「坂本家」とか「徳川家」という背景をしっかり下調べし、
どのような家系だったのか理解してから「竜馬」や「家康」を調べたら、
見えてこないことも見えてくる。

私の大好きな作家南條範夫は大上段に構えてそんな事を
語ってはいませんが、恐らくそういった思考回路をベースとして
歴史を見てるんだろうなと思わせる考察をしてる。

この中嶋繁雄も、そういった「お家」本位制みたいなものを
重視していると見えるんですね。だから、自分の歴史観と
近いヒトかな?と思って、本書も読み始めた。

三部構成になっており、第一部将軍と大名異聞録、第二部暗君探訪、
第三部名君九十八人のお殿様。

第三部は九十八人も紹介するだけあって更に区分けされており、
戦国大名の末裔たち、流謫・自刃に果てる、幕閣をうごかす、
栄光と転落、カルチャー大名、幕末動乱に生きる。
目ぼしい大名をピックアップしていくうちにどんどん増え、
こうなったら片っ端から紹介しちゃおうといった感がする。

各大名を時期やジャンルに分けているが、江戸期全般に亘っているので、
江戸期の有名大名はほぼ網羅されえている。それだけに一人に割けられた
スペースは小さく、エピソード羅列に終始している。

知っている話も多いが、大名は百二十余侯も登場しているので、
知らなかった話も結構あった。

そういった観点では雑学堪能本として有効だし、一人でも多くの
無名大名の足跡を知りたいという歴史ファンには良い。
著者の鋭い考察を楽しみにしていた自分にとっては、少々思惑がずれた。

私が編集者だったら、多くの歴史ファンが既に知っている記事は
大幅カットして、これは!と著者が思っているエピソードを掘り下げて、
ベスト50くらいに厳選した方が良かったのではないか。

類似本は数多く出回っているだけに、さすが中嶋と
唸らせる作品にして欲しかった。






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