2010年09月 第402冊
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池波正太郎 「鬼平犯科帳」10 文春文庫
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「鬼平9」を読んだのが2007年4月ぶりだから、
3年半ぶりに鬼平に帰ってきたことになる。
私はムラっ気があるのか、突然嫌んなることがある。
鬼平は実に面白い小説なのだが、じっくり読み続けることに
厭いてしまった。
厭きながら読むのは勿体無さすぎる本書、ならば
いっそ読みたくなる日まで放っとこう。
そうこうしてたら、3年半も経ってたんですね。
虚心坦懐、突然読みたくなって、読み始めたのがこの第10巻。
どうして3年半も放っといたんだ?と思う面白さ。
短篇読切りからなる大シリーズものは、厭いたら放ってみる。
そのうち必ず読みたくなるから、そしたら読み出せばいい。
本当に面白かった。
盗賊改メの長官が長谷川平蔵、人呼んで鬼の平蔵。
その下に与力、同心と続く。
必殺仕事人の中村主水は町奉行所の同心であり、今の会社で言えば
課長補佐とか係長辺りと言ったところか。長官が部長とか局長で、
与力が課長ね。この第10巻では、そんな与力同心ではなく、
さらにその下の密偵(みってい、いぬ)をしている最底辺の刑事たち。
彼らは主に、もと盗賊や犯罪者。
鬼平に捕まえられ裁定されたとき、こいつは見所があるな、改心しているな、
と思われた者達が罪を許される代わりに、密偵となって下働きをするわけだ。
今までの盗賊仲間のアジトや容貌、人の繋がりや様々な掟を知っている。
それらをフルに生かして、スパイさながらの活躍をしてゆくわけだ。
お上の手下という事は世間に隠し、あくまで市井の元盗賊
というかたちで世に潜む。そうしていると昔の仲間に出会うこともあるし、
盗み仲間の誘いも受ける。それをうまくあやしながら、盗賊一味の全貌を掴み、
中核に迫ってゆく。
第10巻でここまで描いてしまったら、このあと何を描くんだろうと
思ってしまうほどよく描かれている。なにゆえ池波正太郎が
神格化されているか分かるには、鬼平が最適かと思う(これしか読んでないが・・・)。