2010年10月 第416冊
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広田厚司 「本当にあった戦争の話 」 光人社NF文庫
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これは面白い、お薦めです。
光人社NF文庫という、ちょっと特殊で、
小さな本屋さんでは取り扱っていない文庫であることが惜しい。
新潮文庫や文春文庫、もしくは中公新書あたりだったら、
もっと多くの人に気軽に手に取って貰えるだろうに。
逆に、著者広田厚司が凄いのか、光人社の編集企画力が凄いのか、
有名出版社ができなかった「いい仕事」を見事成し遂げています。
全体で50話ありまして、三部に分かれている。
第一部「諜報」、第二部「戦場」、第三部「政治謀略」。
第一部「諜報」は、所謂スパイ大作戦。
日本はスパイや情報戦にいまだに疎くて、戦時のゾルゲ事件くらいしか
大きな事件は無いですが、欧米はスパイ戦がゴロゴロ。
映画「007」なんかがシリーズ化される訳です。
有名な暗号機エニグマやカナリス提督の正体、
スウェーデンの石油王エリクソンなど、
魑魅魍魎な化かし合いが登場。
第二部「戦場」では、戦後という今だからこそ、
当時戦場の真っ只中での偶然が記録から判明する
軌跡のような話のオンパレード。
関が原の合戦ように何百年も前の戦いじゃないから、
何時何分こういう作戦行動をしたという記録が残っている。
ほんの数分の命令の違いが戦局に大きく影響してしまった、
と戦後だから解析できる。
あの時、あのタイミングで、ああすれば勝てたのにという、
歴史の深さが良く解るエピソードてんこ盛り。
第三部「政治謀略」。
よく「水面下で必死の交渉が重ねられたが・・・」なんて書かれますが、
歴史の一ページの記載されているのは、最終的な結果だけ。
実際は様々な可能性を多くの人たちがそれぞれの思惑を抱えて
動いているのです。
より強い力が、より激しい動機が、そして運命の
あがらいようの無い流れが、歴史を象(かたど)っている。
英国はヒトラーを買収しようとしたのか?
ヒムラーの失敗に終わった和平工作。
ヒトラーの個人秘書を務めたマルチン・ボルマンの謎・・・。
全50話あるんですが、興味の尽きない話ばかりで、
一話一話じっくりと読んでしまった。