2010年10月 第418冊
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小玉ユキ 「坂道のアポロン」6 小学館フラワーコミックスα
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本書「坂道のアポロン」は、第4巻まで読んだ時点で紹介しているのだが、
この第6巻がいよいよ神展開になってきたのであらためて紹介したい。
このお話が高校生活だけで終わるとしたら、全10巻(予想)。
大きな話の流れから大学上京編へと長編化して欲しいし、
社会人編へと進むに値するほど奥の深い設定が出来上がっている。
本書が多くの高校生マンガと異なっているのは、
大学生から活動家崩れとなってしまった「淳兄」の存在が、
第6巻でますますクローズアップされる。
高校生だけの他愛の無い片思いや告白、文化祭やケンカといった
日常に加え、もう一人のヒロインが東京の大学生「淳兄」に
恋をすることで話がこんがらがって、どうにもやるせない
五角関係となっている。
60年代の学生は熱かった。
それは数々の文献や事件、それに小説などで我々も窺い知れる。
しかしそれを一つの青春群像劇、今現在連載されているマンガとして
読める本作品は、非常に新鮮で驚くほど面白い。
誰もが真剣に生き、考え、相手にぶつかってゆく。
そこへジャズという音楽が彼らの間に流れ、堅苦しい議論に堕さずにいる。
作品当初ではコチコチの秀才君だった主人公も、
友人や失恋のお蔭で随分成長してきた。
そして第6巻ラストでは、いよいよ恋の新展開に突入か?
といったところで終わる。
おそらく本作品の事だから、単なるアツアツ・ラブコメとはいかず、
誤解やすれ違い、昔ならではの恥じらいで話は遅々として進まないだろうが、
そんな古き佳き展開が嬉しい。
高校生編として、起承転結の「転」にいよいよ入ったと言える第6巻。
未だ読んでいない人は、是非、今からでも手にとって読んで欲しい。