2010年11月 第421冊
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鯨統一郎 『新・世界の七不思議』 創元推理文庫
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なるほどね、確かに本書を絶賛するレビューが多いわけだ。
本書を読んでいる最中から感じた率直な感想だ。
作中で採り上げられた七不思議は下記の7つ。
アトランティス大陸、ストーンヘンジ、ピラミッド、
ノアの方舟、始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像。
ペンシルベニア大学教授の歴史学者は、日本の若く美しい
歴史研究家静香に京都奈良へと案内される予定である。
そんな旅の前夜、静香に誘われて裏寂れた
バー「スリーバレー」に立ち寄る。
そこには世界史に弱い男と、最新装置を
隠し持ったバーテンダーしかいない。
4人は雑談からいつも世界の不思議について
語り合っていくワンパターンなのだが、美貌の静香が
歴史に弱い男・宮田を徹底的に罵倒しながら
七不思議の概略や通説、問題点などを説明してゆく。
この、美人が男を罵倒してゆく過程に著者は
拘り抜いているのだが、私的にはとても不愉快。
この二人の言葉攻めの掛け合いが本書のもう一つの特徴なのだが、
著者が何に拘りすぎてここまで偏執的に書き込んでいるのか
不思議でならない。
一方、罵倒され続ける男・宮田が、ほとんどない前知識から
断片的な情報を組み立てて、歴史の真髄を推理してゆく様は見事。
この歴史ミステリの解明過程は実に面白く、こういった設定に
しなくても十分楽しめるはずだ。
静香に罵倒されながら歴史概略をなぞりつつ、
一つ二つの疑問点から見事な組み立てに発展してゆく。
絶対それが真実だとも思えないけれど、もしかしたら
確かにそういうこともありえるかも、と思わせてゆく流れが楽しい。