2011年1月 第429冊
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下田治美 「愛を乞うひと」 角川文庫
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幼児期、主人公が母から凄惨な折檻を何度も受ける描写が激しすぎて、
衝撃を持って受け留められた作品。
この作品を読んで考えるに、二つの見方がある。
著者自身の実体験を赤裸々に描いたものなのか、
純粋に創作なのかだ。相当リアルな描写が理不尽なほど続き、
その細かい描写は想像力を超えた迫真性がある。
現実にあった話って意外と「?」となる行動や展開が多く、
もっと感動作品に仕上げる事も出来ただろうに、
敢えて突き放したような動きになっているのはこのためじゃないだろうか。
本作での結末はどちらにも受け留められるような、
母と娘の関係がどうなったか、否、どうにもならなかったような、
幾通りにも想像できる不思議な結末。
いずれにせよ、強烈な印象が残る力作だと感じた。