2011年1月 第431冊
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黒川博行 「雨に殺せば」 文春文庫
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東野圭吾(1958−)や伊坂幸太郎(1971−)が
大人気な現代ミステリ界ですが、私は東直己(1956−)や
今回読んだ黒川博行(1949−)の方が好きです。
伊坂はまだ初期の作品(グラスホッパー、重力ピエロ)しか
読んでないので文体が自分に合わないんですが、
東野は少し軽い感じが合わない。
その点、東と黒川はじっくりと読み進めたい筆致が
自分好みで、特に黒川の地味ながら本格派警察モノは
リアリティ過ぎて、こういう職人的なスタイルを
初期の頃から押し出していたのに感心させられる。
黒川作品としてはお馴染みの黒豆コンビという
大阪の刑事二人が、軽妙な会話で捜査が進んでゆく。
題名「雨に殺せば」が重要なキーポイントとして
終盤浮かび上がっており、ラストの謎を解き明かして
ゆくシーンは少し2時間ドラマっぽい。
銀行の現金輸送車が襲われ、死者も出る。
しかも襲われた銀行行員が自宅マンションから
飛び降り自殺するという、事件が立て続けに発生する。
少しの手掛かりを元に、捜査を広げ深めていく事で、
地道に事実が浮かび上がってくる。
容疑者の誰もが少しづつ怪しく、それだけに
慎重な捜査が必要となってき、終盤まで
どう決着してゆくのか読みにくいのも面白かった。